古い家に入った瞬間、「まっすぐ立っているのに気持ち悪い」「床が傾いている気がする」と感じることがあります。傾きが大きいと、すぐに解体や建物全体のジャッキアップを考えたくなるかもしれません。

しかし、床そのものの調整で対応できる場合と、基礎・地盤・柱や梁まで調査すべき場合では、必要な工事も費用も大きく異なります。高額な工事を先に決めるのではなく、まず傾きの程度と原因を確認することが重要です。

先に結論

  • 感覚だけで終わらせず、傾きの位置と高低差を測る
  • 床だけの問題か、建物全体の問題かを専門家に確認する
  • 雨漏り・シロアリ・柱・基礎・給排水も一緒に見る
  • 解体や大規模なジャッキアップを先に契約しない
  • 建物の状態だけでなく、立地や今後の活用方法も含めて判断する

約8cmの高低差は、部屋に入った瞬間に分かった

北九州市八幡東区で取得した古い長屋では、2階の一室に入った時点で、体が傾くような不快感がありました。目で見ただけでは分かりにくくても、立っているだけで違和感を覚えるほどの状態でした。

その後、レーザー墨出し器を使って床面を測定したところ、室内の高い部分と低い部分で最大約8cmの高低差がありました。1階にも傾きはありましたが、2階の方が強く感じられる状態でした。

なお、この「約8cm」は室内の高低差です。測定した距離を含む勾配ではないため、後述する国の技術的基準と数字だけを直接比較することはできません。

床の傾き調整を行う前の北九州市八幡東区の長屋室内
修繕前の室内
床の高さを調整し洋室化した長屋の室内
床の高さ調整・洋室化後

今回行ったのは、建物全体のジャッキアップではない

この物件では、建物全体を持ち上げるジャッキアップは行っていません。大工に依頼し、床を作り直す工程でレーザー墨出し器を使って高さを確認しながら、低い部分へスペーサーを入れて床下地の高さを調整しました。

つまり、今回の対応は建物全体の傾きを直したのではなく、2階の一室を生活できる床面へ整えたものです。現在は入居中で、これまで床の傾きに関する苦情や不具合は出ていません。

重要:床下地の調整でよいか、基礎や地盤を含めた工事が必要かは、傾きの原因によって異なります。この事例と同じ方法を、調査せず別の建物へ当てはめることはできません。

床の傾きは「何cmあるか」だけでは判断できない

国土交通省の「住宅紛争処理の参考となるべき技術的基準」では、床の表面における約3m以上離れた2点間の勾配について、3/1000未満、3/1000以上6/1000未満、6/1000以上の3段階で、構造耐力上主要な部分に瑕疵が存在する可能性を示しています。

ただし、これは住宅紛争処理の参考基準であり、「この数値なら安全」「この数値なら解体」と判断する基準ではありません。測定条件も決められているため、部屋の一部で測った高低差だけを当てはめることもできません。

国土交通大臣指定の住宅相談窓口である住まいるダイヤルも、床の傾きについては現地調査を行い、住宅事業者または第三者の建築専門家へ相談するよう案内しています。

参考:国土交通省「住宅紛争処理の参考となるべき技術的基準」/住まいるダイヤル「床が傾いています。構造に問題があるのでは?」

相談や工事の前に確認したい5つのポイント

1.どこからどこまで、どの程度傾いているか

まず必要なのは、感覚ではなく傾きの範囲を把握することです。今回の物件ではレーザー墨出し器を使用しました。所有者自身で正確に判断するのが難しい場合は、写真や間取りを準備し、大工や建築士などへ測定を依頼する方が確実です。

2.床だけか、建物全体にも症状があるか

建具が開閉しにくい、柱や壁も傾いている、基礎に目立つひび割れがあるなど、床以外にも症状が出ていないか確認します。原因を特定せず、表面だけを水平に見せる工事をすると、根本的な問題が残る可能性があります。

3.雨漏り・シロアリ・腐朽がないか

床の傾きだけでなく、雨漏り、蟻害、柱や床下の腐朽も確認します。今回の物件も購入前に、雨漏り、シロアリ、柱、基礎を一通り確認しました。傾きが直せても、屋根や構造材の傷みが大きければ、全体の修繕計画は変わります。

4.水道・排水・電気などのインフラが使えるか

古い家では、内装より給排水や電気設備の方が高額になることがあります。水道や排水が使えない、電気容量が極端に小さいといった場合は、その工事費も含めて売却条件や活用方法を考える必要があります。

5.修繕後に使える立地・条件か

建物を直せることと、実際に活用できることは別問題です。土砂災害などのハザード、駐車場の有無、周辺の賃貸需要、再建築の可否なども確認します。特に地方では、敷地や近隣に駐車場を確保できないことが、活用の大きな障害になる場合があります。

傾きがあっても、すぐ解体とは限らない

私自身が物件を検討する際、屋根が抜け落ちるほど雨漏りが進行している、災害リスクが非常に高い、駐車場を確保できず活用の見通しが立たないといった場合は、購入を見送る可能性が高くなります。

一方で、床の傾き、軽微な雨漏り、一部のシロアリ被害だけで直ちに再生不可とは判断しません。対応できる業者と修繕費の見通しがあり、修繕後の活用方法が成立するなら、再生できる可能性があります。

重要なのは「古いから壊す」「傾いているから大規模工事」と短絡的に決めないことです。まず状態を測り、原因と必要な工事を整理してから判断します。

高額な工事を決める前に、今の状態を見てもらう

一般の所有者が、床下地の調整で対応できるのか、建物全体を調査すべきなのかを自分だけで判断するのは困難です。構造や安全性に関わる判断は、現地を確認できる建築士、大工、施工業者などへ相談してください。

まだ売却するか、修繕するか、解体するかを決めていなくても構いません。所在地、建物の写真、傾きを感じる場所、雨漏りやシロアリの有無など、分かる範囲だけでも判断材料になります。

床が傾いた空き家も、解体を決める前に

写真添付も可能です。福岡県内の物件について、分かる範囲からご相談ください。

床の傾きがある古い家について相談する

今回の長屋再生事例を詳しく見る

取得の経緯、水道設備のやり替え、2階の一室を優先した理由、現在も再生途中の1階部分については、床に約8cmの高低差があった長屋を、一室から段階的に再生した事例で詳しく紹介しています。

ほかの物件は、空き家再生事例からご覧いただけます。

※本記事は実際に対応した一事例と一般的な確認事項を紹介するもので、建物の安全性や補修方法を個別に判定するものではありません。傾きの原因、構造、地盤、法令上の条件などによって必要な調査・工事は異なります。

ABOUT ME
空き家相談担当
福岡県内で古い戸建てや長屋を実際に取得し、家財整理、必要箇所の修繕、入居募集、賃貸運営まで行っています。現地で対応した実体験をもとに、空き家や相続不動産に関する情報をお伝えします。