床に約8cmの高低差があった古い長屋を、一室から再生|北九州市八幡東区の事例
「かなり傷んでいて、直せるか分からない」——そんな長屋でも、すべてを一度に改修するのではなく、貸せる可能性が高い一室から順番に再生する方法があります。
今回は、北九州市八幡東区にある全3室の古い長屋で、2階の一室を先に修繕し、入居につなげた実例をご紹介します。取得金額や家賃ではなく、判断した理由、実際に苦労した部分、現在も残っている課題まで正直にまとめます。
この事例の概要
- 所在地:北九州市八幡東区
- 建物:2階に1室・1階に2室の全3室からなる長屋
- 取得時の状態:全体的に傷みが強く、2階の一室には最大約8cmの床の高低差
- 主な対応:床の傾き調整、水道設備のやり替え、トイレの洋式化、壁紙施工、洋室化、キッチン新設
- 現在:2階の一室は入居中。1階の2室は床の修繕までで、再生途中
不動産会社から紹介された、財産整理中の長屋
この物件は、不動産会社から紹介してもらったものでした。以前の所有者も複数の賃貸物件を所有する大家さんで、財産整理の一環として売却を進めていたそうです。
現地を見ると、正直なところ「本当に直せるのか」と不安になるほど傷みがありました。完成後の状態を明確に想像できていたわけではありません。それでも、周囲の経験者からの後押しもあり、建物全体を一度に完成させるのではなく、状態を見ながら段階的に再生する前提で取得しました。
全3室ではなく、まず2階の一室に絞った理由
この長屋には、2階に1室、1階に2室の合計3室があります。取得時点で3室すべてを同時に直そうとすると、費用も時間も大きくなり、完成まで賃料が入らない期間も長くなります。
そこで、3室の中では比較的再生の見通しを立てやすかった2階の一室を優先しました。まず一室を住める状態にして入居につなげ、その後に1階を少しずつ進める計画です。一室でも先に貸せれば、建物全体の再生が終わる前から運営を始められます。
一度に全部直すことだけが再生ではありません。
建物の状態と使える資金を見ながら、優先順位を決めることも大切です。
最大約8cmの床の高低差を大工に調整してもらう
2階の一室で特に大きな課題だったのが、床の傾きです。床面には最大で約8cmの高低差があり、そのまま貸し出せる状態ではありませんでした。
傾きの原因や建物の状態を確認したうえで、大工に依頼し、床下地の高さを調整して生活できる床面へ整えてもらいました。単に床材を張り替えるだけではなく、水平を確認しながら下地から手を入れる必要があり、時間も費用もかかる工程でした。
※床の傾きは原因や程度によって必要な調査・工事が異なります。この事例と同じ方法ですべての建物に対応できるわけではありません。
床の傾きについて詳しく知りたい方へ:測り方、床下地の調整と建物全体の工事の違い、相談前の確認事項を、古い家の床が傾いているときの確認ポイントにまとめています。
水道設備の老朽化に、想定以上の費用がかかった
内装以外では、水道設備の老朽化も大きな課題でした。電気は使用できましたが、水道はそのまま安心して使える状態ではなく、配管を含めてやり替える必要がありました。
具体的な金額は掲載しませんが、水道工事だけでも相応の費用がかかっています。古い物件では、室内の見た目以上に、給排水や電気などのインフラ整備が予算へ大きく影響することがあります。
修繕前・修繕後
2階の一室では、床の調整に加え、洋室化、壁紙施工、トイレの洋式化、キッチン新設などを行いました。

床や壁の内装工事前

床の調整・洋室化・壁紙施工後

床と内装に傷みがあった状態

洋室化と壁紙施工後

交換前のキッチン

キッチン新設・床仕上げ後
取得から約2年以上。建物全体の再生はまだ途中
この物件は、取得から約2年以上が経っています。現在は2階の一室に入居者がいますが、1階の2室は床を直した段階で、室内はまだかなり傷んだ状態です。
すべてが短期間できれいに完成した成功事例ではありません。一室を貸せる状態にするまでにも、水道工事、床の傾き調整、畳の搬出、清掃など、多くの作業が必要でした。古い畳の運び出しや、汚れが強い室内の清掃は、体力だけでなく精神的にも負担の大きい作業でした。
修繕中は「本当に収益化できるのか」という不安も続きました。それでも、まず2階の一室を入居につなげられたことで、段階的に進める判断は間違っていなかったと感じています。
状態が悪い物件ほど、解体や処分を決める前にご相談ください
この長屋は再生できましたが、誰でも同じように取り組めるとは限りません。時間、修繕資金、工事を依頼できる職人とのつながりが必要で、完成までの不安に耐える精神的な負担もあります。
一方で、見た目がかなり傷んでいても、使える部分から順番に再生できる場合があります。所有者の方だけで「もう壊すしかない」と判断する前に、建物の状態や立地、必要な工事を経験者に見てもらうことで、別の選択肢が見つかるかもしれません。
ほかの事例は、空き家再生事例や、約10年間空き家だった相続物件の再生事例でもご覧いただけます。
※建物の状態、傾きの原因、権利関係、法令上の制限などにより、必要な対応や活用結果は異なります。本記事は一つの事例であり、すべての古い長屋が同様に再活用できることを保証するものではありません。